医療

放射線の影響は?プロの放射線技師がまるっと解説!

はじめに

「レントゲンて放射線の検査だよね…?大丈夫なの?」

検査を受ける際に、この放射線の影響についての疑問をお持ちの方は多いのではないでしょうか?
最近は「ラジエーションハウス」のドラマが放送され診療放射線技師の認知度も高まってうれしい限りですが、肝心の放射線に関しての認知度はいまいちです。

私は、診療放射線技師・放射線取扱主任者第1種の資格を保有しています。
つまりは放射線のプロです。


そんな私が今回は放射線の影響についてご説明させていただきます!

放射線の影響の前に、そもそも「放射線」とは?

放射線の影響について知る前に、まずは「放射線」について簡単に知っておきましょう。ここでは難しい定義や種類については省略させていただきますが、放射線は様々な姿・形で利用されています。

放射線は生活の中に溢れています。

例を挙げるなら、電子レンジの「マイクロ波」、レーザーポインターの「赤外線」、太陽から降り注ぐ「紫外線」これらも放射線に分類されます。
といっても、私たちが検査で扱う放射線とはまたエネルギーが違うのでいちいちこれらに怯える必要性は全くありません。

放射線の影響として放射線の量について少しだけ学んでおきましょう。
放射線の量を表す単位は「Gy(グレイ)」と呼ばれます。
この後の章で「何Gyで放射線の影響が出る…」という説明がありますので、なんとなく覚えておきましょう。
※人体への影響を考える際は別の単位で「SV」という単位を使いますが今回はわかりやすくGyで説明していきます。
では次の章から放射線の影響についてです!

部位による放射線の影響は?

さて本題に入っていきます。
人体が放射線を浴びた場合にはどんな影響があるのでしょうか?この放射線を浴びる事を「被ばく」と呼びます。
影響の出方は放射線の被ばく量と、身体の一部分浴びる「局所被ばく」か全身に浴びる「全身被ばく」で変わってきます。
まずは部位による人体への影響を説明しましょう。

局所被ばく

ではどんな際に局所被ばくは起きるでしょうか?
答えは簡単。病院での検査です。

手足のレントゲン検査
頭のCT検査、腹部のCT検査
心臓のカテーテル検査…etc…

このような病院で行う放射線検査で、身体の一部が被ばくするのを「局所被ばく」と言います。
このような一部被ばくでは人体全体を脅かすような影響は起きにくく、また私達が行う放射線検査は可能な限り、被ばくの量を抑えてあるのでご安心ください。

全身被ばく

1986年のチェルノブイリの原発事故、2011年の福島で起きた原発事故…この事故時に放射性物質が現場付近に大量にばらまかれました。この状況に身を置いたとするとどうなるでしょうか?
そう全身に放射線をあびてしまいますね。
この事故時のように、全身に放射線の被ばくしてしまうのは「全身被ばく」と言います。

ちなみに全身被ばくの際に4Gy以上の放射線を浴びると人は死にいたります。

具体的にいうと骨髄死がおきて出血、感染症で半数近くの人間が死んでしまいます。
ただご安心いただきたいのは、
日常生活ではもちろん医療現場でも4Gyという放射線の被ばくはまずありません。

「でもなん回も検査を受けていたら、合計で4Gyにならないの?」

結論からお話しすると、確かに放射線を使用した治療検査を行う患者様では4Gyを超えてしまいます。
ですが

人間の身体には組織の修復機能があるので、分割して治療を行うことでその問題を回避しています。

どれくらい被ばくしたら放射線の影響はおきるの?

ここからは放射線の量に関して説明していきます。
放射線の影響は「確定的影響」と「確率的影響」の2種類に分けられます。少し難しくなりますが、放射線の影響として1番大事になるところなので、しっかりと目を通して覚えていきましょう!

確定的影響

確定的影響とは「しきい値」という放射線量を被ばくする事で生じます。では「しきい値」とは何でしょうか?

しきい値とは、
「障害が発生する放射線量」を表します。
細かく説明すると、同量の放射線量を被ばくした集団の1%が障害を発生した時の放射線量をさします。

つまり確定的影響は、
「ある一定量の放射線を被ばくした際に起きる障害」

と、なります。個人差は若干ありますが、このしきい値を超えると以下のような症状があらわれます。

  • 一過性紅斑   2Gy
  • 一過性脱毛   5Gy
  • 紅斑      6Gy
  • 永久脱毛    7Gy
  • 水晶体混濁   0.5Gy
  • 白内障     5Gy
  • 造血能低下   0.5Gy
  • 放射線急性障害 1Gy

確率的影響

確率的影響には以下の疾患があります。

  • がん
  • 白血病
  • 遺伝性病変

確定的影響にはしきい値がありましたが、

確率的影響の障害には具体的な放射線量がありません。


放射線の被ばく量が増えるとそれに伴い障害が発生するリスクが高まっていきます。

またそれぞれの障害には放射線被ばくがなくても起きる「自然発生率」もあります。被ばく量が少ない場合は、放射線の影響による障害か?それとも自然発生によるものなのか?という判別をつけるのは非常に困難といえます。

検査・治療による放射線の影響は?

先の章でも少しだけ触れましたが、

検査による放射線の影響は限りなく低く抑えられています。


なぜ限りなく?と思われるかもしれません。
その理由は先ほど説明させていただいた、「確率的影響」が関係してきます。

検査による被ばく量は非常に低く抑えられていますが、

確率的影響の障害は起きる可能性が0%とは言えないのです。

「じゃあ、がんになるかもしれないんでしょ?だったら検査なんて受けたくない!」

とおっしゃる方もいるかもしれません。

そこであなたが検査をしなかった場合、身体の中にある隠れた病気を見落とすことになり命を落とす可能性があります。

私が診療放射線技師として、この記事で1番お伝えしたいのはここです。他の説明は忘れても良いので是非ここだけでも覚えてておきましょう!

さて、確率的影響についてばかり触れてきましたが、
「じゃあ確定的影響は大丈夫なの?」
となるのではないでしょうか?

レントゲン、CT検査を検査であれば、まずしきい値を超えることはありません。

問題は、
血管撮影治療と放射線治療による確定的影響による障害です。
この二つの治療方法では

長時間の被ばくや多量の放射線を患部に当てるために、皮膚への確定的影響を起こす場合があります。

しかしこの治療は
心筋梗塞で詰まった血管の開通や、がん治療の放射線照射です。
この治療を行わないと命を落としてしまう可能性が非常に高いと言えるでしょう

放射線の被ばく量が高くなった場合、病院のスタッフは放射線の影響による障害を懸念し適切な処置と経過観察行います。もし仮に障害が起きたとしても次第に回復していくので安心して治療を受けましょう。

女性への放射線の影響は?

「放射線被ばくすると不妊症になるって聞くんだけど…?」
こう気になさる女性の患者様がいらっしゃいます。
では一般的な検査の放射線の影響はどの程度のものなのでしょうか?良く行われる検査の具体的な被ばく量を以下にまとめましょう。

  • 頭部CT検査 85mGy
  • 腹部CT検査 20mGy
  • 胸部CT検査 15mGy
  • 胸部レントゲン 0.3mGy
  • 腹部レントゲン 3.0mGy

※mGy=Gy/100(とても小さい)

一方、女性の不妊のしきい値は、
一時不妊 1.7~6.4Gy
永久不妊 3.2~10Gy

検査の数値は診断参考レベルという目安値で、施設ごとに数値はことなります。
比較的数値が高い頭部CTの検査ですら被ばく量は85mGyです。
従って通常の検査ではまず不妊症になることはありません。

胎児への放射線の影響は?

不妊の次に気になる内容として、胎児への放射線の影響について説明しましょう。胎児にも確定的影響のしきい値が存在し、妊娠周期によってしきい値と障害の内容が変わります。わかりやすく胎児の妊娠周期のしきい値と障害内容をまとめましょう。

  • 着床前期  (受精後8日後) 0.1Gy  ⇒胚死亡
  • 器官形成期 (3~8週後)  0.1Gy  ⇒奇形
  • 妊娠中期  (8~15週後)  0.1~0.2Gy ⇒精神遅滞
  • 妊娠中期  (16~25週後)  0.1~0.2Gy⇒発育遅滞

上記のように、胎児への確定的影響のしきい値は、妊娠周期にかかわらず、0.1Gyとなります。
今までの確定的影響に比べてしきい値がだいぶ低いと思いませんか?
分裂を盛んに行う細胞は、放射線の影響を受けやすい性質を持っています。胎児は様々な器官を形成し成長していくので非常に放射線の影響を受けやすい状態と言えるのです。

では胎児がいる状態では検査が出来ないの?となりますね。
検査時の胎児の被ばく線量をまとめましょう。

  • 腹部レントゲン 1.4mGy
  • 胸部レントゲン 0.01mGy
  • 頭部CT 0.005mGy
  • 腹部CT 8mGy

胎児は母体に守られている為に、通常より放射線の影響は受けづらくなっています。各検査を比較的被ばく量の多い腹部CT検査を10回受けたとしてもしきい値には満たないので、妊娠に気づかず検査を受けた場合でもそれだけで妊娠中絶を行う理由にはなりません。

しかし確率的影響である、小児がんや白血病については、
0.01Gy以上被ばくをすると自然発生率に比べると40%増加します。40%増加と聞くと非常に大きな数字のように思えますが、もとになる自然発生率が低い為それほど大きな変化にはなりません。
具体的に
0.01Gyを胎児期間に被ばくした際、0〜15歳の間にがんで死亡するリスクは1700人中、1人と言われています。

上記してきたように、胎児への放射線の影響は、正常な範囲での検査であれば、非常に低いと言えるでしょう。

とはいえ、胎児が放射線の影響を受けやすいことは確かなので、検査を行う際は慎重になる必要があります。検査のインフォームドコンセント(説明・同意)を行い、本当にその検査が今必要か?出産後でも良いのではないか?という事を吟味した上で検査は行う必要があります。

例を挙げさせていただくと、
私が勤務する病院では妊婦に対しての放射線検査は基本行なっていません。

結局の所、胎児に障害が発生した際に、放射線の影響があったのか判別が非常に難しいからです。そうなった場合、医療施設と患者の間でのトラブルになる可能性が高いです。

事実私も勤務してきた中で、発覚している妊婦への放射線検査はみたことがありません。
緊急性が高く、母子母体ともに生命に関わるような内容でないと検査は行われないというところが現状なのでしょう。

まとめ

最後に放射線の影響について記事の内容をまとめましょう!

  • 放射線の影響は「局所」か「全身」で変わる。
  • 放射線検査によって障害が起きるリスクは限りなく低い。
  • 放射線検査を行わない場合の方がデメリットが大きい
  • 通常検査は放射線の影響で不妊にはならない。
  • 胎児は放射線の影響を受けやすい
  • 妊婦への検査は放射線の影響を考慮し慎重に行う必要がある

放射線は扱い方によって、人間の身体を傷つけもすれば治療にも使われます。その放射線を扱う資格を持っているのが私達、「診療放射線技師」となります。必要なのない検査は医師もオーダーしませんし、技師も「この検査必要かな…?」と思えば医師に問い合わせを行います。安心して検査を受けていただき、また気になる点はどんどん質問していきましょう!

ABOUT ME
ryuji
はじめまして!プロフィールの閲覧ありがとうございます。 ryujiと申します。診療放射線技師として経験を積み、現在は仕事上で得た知識を広めていきたいと思い、ブログ運営を行っています!また自分が苦労した転職活動においても人材事業を通してサポートしていきます! ★2013年:診療放射線技師取得 ★2014年:放射線取扱主任者1種取得